☆☆☆

遠くから、すぐるの声が聞こえる。


……なんだか、怒ってる?


ほんの少し会わなかっただけなのに、ずいぶん懐かしい声。


すぐる……。


すぐる、やっぱり私すぐるのことが好きみたい。


夢の中だから、素直に言える。


私は、すぐるのこと忘れられるのかな?


清子さんとの関係を、ちゃんと祝福できるのかな?


今のままじゃ、自信がないよ……。


「……碧!!」


突然聞こえてきた現実の声に、私はハッと目を覚ます。


「え……?」


まだボンヤリする意識の中で、声を主を探す。


「寝るなら鍵かけろって言っただろ」


怒ったような、その声。


「すぐる……?」


まさか、すぐるがこんなところにいるワケがない。


きっと、お父さんが仕事を早く切り上げて帰ってきたんだ。


「お父さん、部屋に勝手に入らないでよ」


目をこすりながら起き上がり……え!?


目の前の人物に、思考回路が停止する。


す……ぐる!?


「誰が『お父さん』だ。バカ」


いつも通りのすぐるが、今ここにいる。


なに?


夢?


私はゴシゴシを目をこすり、ブンブンと頭をふる。


夢なら、早く目覚めて!


けれど、目の前のすぐるは消えなかった。


「……すぐる?」


「なんだよ」


仏頂面で、そう聞き返してくる。


「すぐる!!」