☆☆☆

教室のドアを開けると、いつものように律の笑顔がそこにあった。


「あ……おはよう」


私も、なんとか笑顔を作る。


けれど、いつものようには笑えない。


「碧、先輩とはどうだったのよ?」


さっそく、律がそう言って私をつついてくる。


本当に聞きたくてしかたないって事、ないハズだ。


耳をふさいでしまいたいハズだ。


なのに、律は私をせかす。


「律……」


「なになに?」


身を乗り出して、聞く体制に入る律。


「無理、しないでよ」


「……え?」


「本当は、聞きたくないんでしょ?」


私は、思わずそう言っていた。


律が、少し驚いたように目をパチクリしている。


「自分の好きな人が、自分の親友とデートしてるんだよ? そんな話し、聞きたいワケないじゃん!」


律は、何も悪くない。


わかっているのに私はそう怒鳴り、机を両手でバンッと叩いた。


「碧? どうしたの?」


「いい人ぶらないでって言ってるのよ!」


違う。こんなことが言いたいんじゃない。


でも、とまらない。

「いつでも『私は平気だから』って顔してさぁ。

平気じゃないくせに! 律ってさ、見てて感情がないんじゃないかって思うくらい、いつも笑ってる。おかしいよ!」


……律が、無言のまま私を見ている。


ジッと、目をそらさずに。


私は、下唇をかみ締めた。


「碧がそう言うなら、そうなんじゃない?」


いつもの律じゃない。


冷たい声で、そう言った。


「律――」


「私、ロボットじゃないわよ」


私の言葉をさえぎって言う。


ロボット……?