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教室のドアを開けると、いつものように律の笑顔がそこにあった。
「あ……おはよう」
私も、なんとか笑顔を作る。
けれど、いつものようには笑えない。
「碧、先輩とはどうだったのよ?」
さっそく、律がそう言って私をつついてくる。
本当に聞きたくてしかたないって事、ないハズだ。
耳をふさいでしまいたいハズだ。
なのに、律は私をせかす。
「律……」
「なになに?」
身を乗り出して、聞く体制に入る律。
「無理、しないでよ」
「……え?」
「本当は、聞きたくないんでしょ?」
私は、思わずそう言っていた。
律が、少し驚いたように目をパチクリしている。
「自分の好きな人が、自分の親友とデートしてるんだよ? そんな話し、聞きたいワケないじゃん!」
律は、何も悪くない。
わかっているのに私はそう怒鳴り、机を両手でバンッと叩いた。
「碧? どうしたの?」
「いい人ぶらないでって言ってるのよ!」
違う。こんなことが言いたいんじゃない。
でも、とまらない。
「いつでも『私は平気だから』って顔してさぁ。
平気じゃないくせに! 律ってさ、見てて感情がないんじゃないかって思うくらい、いつも笑ってる。おかしいよ!」
……律が、無言のまま私を見ている。
ジッと、目をそらさずに。
私は、下唇をかみ締めた。
「碧がそう言うなら、そうなんじゃない?」
いつもの律じゃない。
冷たい声で、そう言った。
「律――」
「私、ロボットじゃないわよ」
私の言葉をさえぎって言う。
ロボット……?