「だからよ……」


私は、自分自身に言い聞かせる。


「だから、今日学校に行って律にちゃんと伝えるの」


すぐるの事で傷つくのがこわくて逃げたこと。


誠先輩を好きになったと思い込んでいたこと。


まだ……。


まだ……。


「まだ、すぐるを好きなこと……」


イイナズケという存在がいても、好きな気持ちをとめられないこと……。

ズキン。


また、胸が痛む。


きっと、私のこの恋は実らないだろう。


もう、恋愛へ発展することもないだろう。


すぐるの手も。


すぐるの笑顔も。


すぐるのキスも。


すぐるの意地悪も。


すぐるのぬくもりも。


すぐるのすべて――。


私のものには、ならない……。

それでも、私には今、あの人しかいないの――。


ギュッと両手で胸元の服を握り締める。


あの時、出会わなければ、こんなに苦しいことはなかったのにね……。