目の前の森山すぐるによって、私の夢は崩れ去った。


「いやぁぁっ!!」


すさまじい悲鳴と共に、ガバッ!と飛び起きる。


心臓がバクバクと高鳴り、今にも停止してしまいそうだ。


「……碧?」


そんな私に、隣の席の律が顔を引きつらせながら声をかけてきた。


……え?


ハッと我に返り辺りを見回すと、当然、ここは教室の中。


寝ぼけて悲鳴を上げた私を、クラスメートたちがクスクスと笑う。


黒板の前に立つ先生からは、冷たい視線が突き刺さる。


「ご……ごめんなさい」


恥ずかしい!


顔を真っ赤にしてそっと席に座り、うつむく。


「どうした山本ぉ。なんか嫌な夢でも見たのか?」


先生が、わざとらしく私に聞いてくる。


「いえ……」


フルフルと首を振り、教科書に顔をうずめる。


そんな私に律が小声で、「大丈夫?」と心配してくれる。


「ん……夢の中にまであいつが出てきて……」


「あいつって、昼間の?」


「そう、森山すぐる」


こくこくとうなづく私に、律は目を丸くした。


「森山すぐる!? って、あいつが!?」


「律、知ってるの?」


「知ってるも何も、すごく有名だよ? 私も顔は始めてみたけど」


へぇ……?


名前も顔も知らなかったけど?


「気をつけなよぉ碧。S王子に好かれちゃったら、大変だよ」


「S王子……?」

なんだそりゃ?


あまりのネーミングセンスのなさに、プッと笑う。


けど、この律からの忠告は、正しかったんだ。


本当に本当に……正しかったんだ。