「あぁ。碧ちゃん何日も休んでるって聞いたからさ。

それに、色々あったばかりだしね」


最後の言葉は、モゴモゴと言葉を濁しながら言った。


私は一つ頷き、「でも、いくら傷ついてもご飯だけは食べれるんです」と言った。


「漫画とかなら、失恋してご飯が喉を通らない。とか言うけど……実際はそんなこともないみたいです」


アハハ。と、自然と笑みがこぼれる。


久々に笑った気分だ。


「元々、すぐるの事好きでもなんでもなかったから、辛い辛いって思っても、そこまでじゃないのかも……」


「碧ちゃん、あいつの事好きで付き合ってたんじゃなかったの?」


誠先輩が、驚いたように目を見開く。


「いえ、もちろん途中からは本当に好きでした。

けど、出会って突然キスされて、付き合えって言われて……。それが、私たちの最初だから……」


「呆れたヤツだな」


誠先輩はそう言って、軽くため息を吐き出した。


「恋、してるつもりになってただけかもしれないです」


そう呟き、俯く。


初めて告白されて、彼氏ができたから……。


恋してるつもりになって、舞い上がっていただけ。


だって、そうじゃなきゃ今こうして誠先輩と笑いながら話なんて、できるワケがないもん。


「ねぇ、碧ちゃん」


「はい?」


「体調いいなら、明日には学校おいでよ」


私は誠先輩を見あげるようにして見る。


「まだ、森山のことが気になって来づらい?」


「そんなこと……ないです」


半分本当。


半分嘘の返事だった。


その瞬間、なぜだか私は、誠先輩の大きな腕の中にすっぽりと包まれていた。


目をパチクリする私を、誠先輩は優しく抱きしめる。


「誠……先輩?」


少しだけ、胸がドキドキと音を鳴らす。