清子さんの家は大きい。


それに、すぐるとは幼馴染だ。


すぐるのイイナズケが清子さんだとすれば、『清子のこと、責めないでやってほしいんだ』という言葉の意味も、わかる気がする。


すぐるは、自分のイイナズケを守っただけだ。


清子さんは、本当に女遊びの激しいすぐるに困っていただけ。


じゃぁ私は……?


私は、ただすぐるに振り回されて、その気になって。


清子さんの婚約者を横から取ろうとしていただけ――!?


「そ……んな」


誠先輩が、まだ何かを言いたそうにしている。


私は、俯いたままのすぐるを見つめる。


嘘でしょ?


嘘って言ってよ。


いつもみたいに強引に、『そんなの信じてんじゃねぇよ』って、怒ってよ!!


胸が、呼吸が、苦しい。


息が、できない。


「本当のことだ」


すぐるの口から出た言葉は、私が望んでいた言葉ではなかった。


「俺には、イイナズケがいる」


「……ふっ……ぅっ」


思わず、涙がこぼれると同時に嗚咽がもれた。


「碧」


心配してくる律の手を振り払う。


「碧ちゃん!!」


駆け出す私に、誠先輩が「まだ、話しがあるんだ!!」と、叫ぶ。


もう嫌!!


もう、何も聞きたくない!!


みんなが恋人と一緒に花火を見ている間、私は一人で、泣いていた――。