「いつか、ちゃんと話すつもりだ」


すぐるが、キッパリと言い切る。


あぁ……。


そういえば、私を置いて帰った時にそんな事言ってたよね。


「お前の『いつか』っていつなワケ?


今までの子達の時もそうだよな?


お前が振り回すだけ振り回して、いやがらせまで受けてたのに、結局自分のことは何も話さず別れてきただろ」


誠先輩の言葉が、小さなとげになって突き刺さってくる。


写真の子達を思い出す。


できれば、そんな話聞きたくない。


耳をふさいでしまいたい。


「いつまで待っても、お前の『いつか』なんて来ないんじゃないか?」


すぐるは俯いたまま、顔を上げようとしない。


少し、肩が震えているようにも見える。


「碧ちゃん」


誠先輩が、私に向き直る。


「こいつのかわりに、教えてやるよ」


「え……?」


やだ。


聞きたくない。


怖い。


必死でイヤイヤと首を振る私に、誠先輩は口を開いた――。


「こいつにはな、イイナズケがいるんだよ」


風が、冷たい。


頬を殴られるような、衝撃。


コイツニハナ、イイナズケガイルンダヨ。


スグルニハネ、イイナズケガイルノヨ。


「碧ちゃんも知ってるだろ、こいつの家。

いい所のボンボンだからさ、生れ落ちたその瞬間から、結婚の相手は決まってるんだよ」


清子さんの言っていた事を、誠先輩がそのまま口にしている。


その瞬間、私の脳裏にある定義がうかんだ。


まさか……清子さんがすぐるの……?