「碧ちゃん」


誠先輩が私に声をかけ、その声にすぐるが振り返る。


ここからじゃその表情は見えないけれど、雰囲気が変わった気がした。


……すぐる、今どんな顔してる?


「どうした、怖い顔して」


誠先輩が、いつもの優しい笑顔のまま、すぐるに言った。


「まるで、大切なものを壊された子供みたいな顔だな」


「……碧に近づくな」


いつも以上に冷たく、そして怒りのこもったようなすぐるの声。


すぐる……どうしたの?


2人の間に何が起きているのか、わからない。


「森山、俺碧ちゃんに告白したんだ」


誠先輩っ!!


なんで? なんで今そんなこと言うの!?


振り向くすぐるの顔を、見ることができない。


私の視界には、真っ暗な地面だけが一杯に広がった。


「碧、本当なのか?」


「……一週間くらい前の……帰り道に」


声が、震える。


どうしていいかわからなくて、手に汗がにじみ出る。


「どうして言わなかった?」


「なん……か、言えなくて」

悪いことなんかしてないのに、罪悪感で胸の中が一杯になる。


押しつぶされてしまいそうだ。


「森山君。碧は悪気はないよ」


そんな私をフォローするように、律が言った。


律の手が、私の背中をそっとなでた。


「いいじゃないか、別に」


誠先輩がそう言い、すぐるに近づく。


すぐるはそれを嫌がるように、誠先輩から遠ざかった。


「お前も、碧ちゃんに隠してることがあるだろ?」


すぐるが……?