すぐるの屋台に行く前に、私は他のクラスからイチゴ飴を2つ買った。


やっぱり、屋台といえばこれ食べなきゃね。


本当はリンゴ飴の方が好きなのだけど、大きすぎて結局最後まで食べきることができない。


なので、買うのは必ずイチゴ飴にしていた。


「すぐる!」


食べ物の屋台がひしめき合う中で、子供たちが何人か座り込み熱中している。


スーパーボールすくいの屋台だ。


「碧、もう交代か?」


「うん」


そう言いながら、私は勝手に屋台の中にお邪魔する。


ブルーのハッピ姿のすぐるも、カッコイイ。



「はい、イチゴ飴」


「イチゴ飴?」


「うん。屋台といえばこれでしょ?」


そう言い、私はすぐるに飴を差し出した。


すぐるはそれを受け取り、それからフッと息が抜けるような笑顔をこぼした。


「どうしたの?」


「いや、なんか、懐かしくてな」


「懐かしい?」


「あぁ。これ好きなヤツがいてさ」


少し、遠くを見つめるようにしてイチゴ飴を見るすぐる。


私じゃない、誰かを見ているような態度に、さっきの清子さんの言葉を思い出す。


『イイナズケ』……。


なんだかんだと強がってみても、気にならないワケがない。


「ねぇ、それってさ――」


「お、いっぱい取れたなぁ」


私の言葉に気づかず、すぐるが子供の取った色とりどりのスーパーボールを透明な袋に入れていく。


「碧」


「え?」


「これやる」