「私は、すぐるを信じてるから」


『俺の事だけ信じてろ』あの契約を、信じてるから。
私は、それだけ言うと屋台の中へと戻った。


「碧、大丈夫だった?」


律が、心配して聞いてくる。


私は満面の笑みを浮かべて、「うん!」と、頷いた――。


☆☆☆

私たちのフライドポテトの屋台は、なかなかの人気だった。


他にも同じものを売っている屋台は沢山あるのだけど、学生が売っているということで、近所のおばさんたちが顔を見に買いに来てくれることが多かった。


「頑張ってね」


「おいしいよ」


そんな言葉をかけてくれると、こちらも自然と暖かい気持ちになる。


ポテトを揚げて自分自身が脂っこくなりながらも、私のさっきまでの黒い感情は薄れて行っていた。


人の言葉ってすごい。


心の色まで変えてしまう力があるんだから。


「山本と清原、交代だ」


しばらくすると、生徒たちの屋台を回っていた先生が帰ってきて、私と律にそう言った。


やった!


やっと他の屋台も見てまわれる。


2時間交代なので、今から2時間はお祭りを楽しめる。


すっかり油の匂いがしみついたハッピとエプロンを脱ぎ捨てて、私と律はさっそく屋台めぐりを始めた。


この辺一体は西雅高校の屋台がズラリと出ている。


「律、私すぐるのところに行ってみるね」


「おう! ラブってこい!!」


ガハハハと、豪快な笑い声を上げて私の背中を押した。