「はい?」
中から出てきたのは、背の高い40代半場くらいの女の人だった。
すぐるのお母さんかな?
「あの、私山本碧といいます。すぐる……君はいらっしゃいますか?」
背筋をピンッと伸ばし、まるで片言の日本語のようにぎこちなく聞く。
「あぁ、さっきの電話の子ね?」
「え……?」
「ごめんなさいねぇ。電話とったの、私なの」
そう言い、口元に手を当てて上品に笑う。
あの電話の声って、すぐるのお母さん!?
そうと知ると、急に体中の力が抜ける。
「あんまり若い声だったから、私……てっきり……」
ヘナヘナとその場へ座り込む私に、慌てて手を差し伸べてくれる。
「あら、若いだなんてありがとう。私はすぐるの母親なの」
その手を借りて、なんとか起き上がる私。
心配して、損した!
「すぐる、今呼んでくるわね」
「はい……」
とりあえず心配事が一つなくなり、私はホッと息を吐き出した。
けど、問題はまだ解決していない。
とにかく、すぐるの本当の気持ちを聞かなきゃ!
しばらくすると、寝癖をつけたすぐるが出てきた。
あれ?
もしかしてもう寝てたのかな。
「ごめんね。寝てた?」
「いや、ちょっと昼寝してただけだ」
大きなアクビを一つして、眠そうに目をこする。
なんか、可愛い。
いつものキツイ目とは違い、トロンとした目つきは日向ぼっこ中の猫みたい。
「すぐるに、聞きたい事があってきたの」
「聞きたいこと?」
「うん」
「とりあえず上がれよ」