律に背中を押された私は、もうすっかり暗くなった道を一人で歩いていた。


目指すは、すぐるの家。


車で10分だけど、歩いたら30分はかかる。


早足で歩いていると、体がポカポカと温かくなり、寒さには困らなかった。


早く、すぐるに会いたい。


会って、話がしたい。


けど……こわい。


もし、あの電話の人が本当に浮気相手だったりしたら、どうしよう?


なんて聞けばいいんだろう?


不安は募るばかりだが、それを見てあざ笑うかのように大きな家が見えてきた。


心臓が、苦しい。


恋愛って、こんなに苦しいものなんだ。


恋しか経験のない私は、いつも恋愛にあこがれていた。


いつも2人でいるんだから、幸せに決まってる。


ケンカしたっていいじゃない。付き合ってるんだから。


そんな考え方しか、できなかった。


本当に付き合うってことが、どれだけ苦しいか、今ようやく理解した。

玄関の前まできて、呼吸を整える。


ドキン。


ドキン。


と、すぐるに抱きしめられたときと同じように、心臓が音を立てる。


そして、私はチャイムを鳴らした……。