「でも……私も、すぐるには『好き』って言ってないし」


「『言ってないし』なに? 碧が言ってないのは当たり前でしょ? だってS王子のこと知りもしなかったんだから」


あ……。


そうだよね。


突然付き合おうと言ってきた、すぐる。


突然だけど、ちゃんと好きだと告白してくれた、誠先輩。


2人の顔が、浮かんでは消え、浮かんでは消える。


「律……」


「うん?」


「私、ちゃんとすぐるに好かれてるよね?」


胸の中に不安が一杯につのり、すがるような思いで律にたずねる。


けれど、律の口から出たのは表面上だけの、なぐさめの言葉なんかじゃなかった。


「正直、碧は振り回されてるだけに見えるよ」


一言一言が、小さな針となって突き刺さる。


けど、これは受け止めなきゃいけない言葉なんだ……。


律は、私のためを思って言ってくれてる。


「碧の話聞いてたら、なんで付き合ってるのかも、わからないよ」


返す言葉が、なかった。



「さっきの電話の事もそうだけどさ。本当は切らずにその女と話すべきだったと思うよ」



「逃げてちゃ、ダメだよ――」