私は、携帯画面に視線を落とした。


もう一度、かけてみようか?


でも、それでまた女の人が出たら?


迷っていると、余計にリダイヤルできなくなる。


『何があっても、俺だけを信じてろ』


すぐるの、あの言葉が、すごく遠い――。

☆☆☆

ずいぶん日の傾いた公園は誰もいなくてさびしかった。


けど、きっとこの光景よりも私の心の中の方がさびしいんだろうな。


今の私は、昼間の月みたいだ。


ずっとそこにいるのに、ほとんどの人がその存在に気づかない。


そんな、月みたいだ……。


「碧!!」


律の声に、私は振り向く。


「律……」


悲しいハズなのに、笑顔がこぼれた。

「碧、大丈夫?」


「うん。なんとか」


結局、私は律に連絡したのだ。


律はすぐに行くからと行って、近くの公園で待ち合わせをした。


まるで、律が彼氏みたいだ。


「女の人の声って、誰なのか確認はしてないんでしょ?」


「うん……。でも、『シャワー浴びてる』とか言われちゃったから」


「そんな……それじゃまるで――」


言いかけて、律は口を閉じた。


私の隣に座って、ジッと地面をにらみつけている。


「ね? まるで、浮気現場って感じだよね」


律の言葉の後を、私は笑いながら続けた。


「碧……」


「大丈夫だよ? でも、一気に色んなことがありすぎて頭の中はグチャグチャかな……。

それにね、今日誠先輩に告白されたんだ」


私の言葉に、律が「はぁ!?」と、声を上げる。


「『はぁ!?』だよね? 私も、急すぎてビックリしちゃって」


「あんた、それってどうするの?」


私は、首を傾げて見せた。


どうするといわれても、自分でもわからない。


そんなにすぐに出せるような答えでもない。