黒いジャージに着替えると、私は携帯電話を手にとって机の椅子に座った。


画面を開き、《すぐる様》のアドレスを出す。


どうしよう、今電話しても大丈夫かな?


初めて、異性に電話をする。


しかも、彼氏にだ。


緊張して、なかなか決心が付かない。


彼女なのだから電話くらい普通にすればいいのだけど、どうしても躊躇してしまう。


すぐるの番号を目の前にして、ボタン一個がなかなか押せない。


その、もどかしい気持ちを吹き飛ばすように、私はギュッと目をとした。


帰り際の、清子さんを擁護するような言葉の意味だって、ちゃんと聞かなきゃいけない。


そのまま大きく息を吐き出し、ボタンを押した。


すぐに呼び出し音が聞こえてくる。


私は自分を落ち着けるように深呼吸をしながら、すぐるが出るのを待った。


そして……。


数コール目で、相手が取った。


『もしもしぃ?』


聞こえてきた少しけだるそうな女の声に、心臓が飛び上がる。


「……もしもし?」


『はいはい? だれぇ?』


「あの……すぐるは……」


『すぐる? あぁ、今ねぇシャワー浴びてるけどぉ?』


シャワー!?


相手の言葉に、私は思わず電話を切ってしまった。


手が、細かく震える。


すぐるの家でみた、沢山の写真を思い出す。


もしかして、あの子たちの誰か……?


嫌な予感が、胸をよぎる。