「一番大切だった人を、失ってるんだ」


誠先輩のその言葉に、私は立ち止まる。


え?


「北河が昔好きだった人、死んだんだよ」


私の数歩前で立ち止まり、そう言った。


「きっと北河は今でもその人のことが好きなんだ。だから……」


「……だから?」


風が吹いて、道に落ちた木の葉が舞い上がる。


誠先輩が、振り向いた。


今までのやわらかい表情から、少し険しい表情に変わっている。


「誠先輩?」


「俺さ、碧ちゃんが好きだよ」


突然の、告白。


思いもよらない展開に、頭が全くついていかない。


けど、誠先輩はすごく真剣な顔をしている。


「北河みたいに、好きな人はいついなくなるかわからない。だから、俺は隠さず気持ちを伝えたいんだ」


誠先輩の言葉が、風にのって耳まで届く。


届くのに、頭に入らない。


真っ白、だ……。
「もう一回言うよ?」


ドクン。


ドクン。


ドクン。


心臓が、うるさいくらいに響く。


「俺は、碧ちゃんが、好きだ――」