「碧~、大丈夫だったぁ?」


まだ頭の中が真っ白な私に、律が心配そうに駆け寄ってきた。


けれど、顔には半分好奇心の笑みをたたえている。


「大丈夫なワケないでしょ!」


教室の中、思わず私は大声で怒鳴ってしまった。


律ってば途中から知らん顔するんだもん!


おかげで私は、あんなS男からキスされたんだよ!!


そう思うと、突然涙がこぼれだしてきた。
「碧、どうしたの? マジでなんかあった!?」


その場にしゃがみこんで泣き出す私に、律が困ったように背中をさすってくれる。


クラス内にいた生徒たちが何事かとこちらに視線をうつすが、それにもかまわず私は声を出して泣いた。


「律ぅ~……私、ファーストキス取られちゃったぁ」


そう言い、更に大声を上げて泣き始める私に、律はポカンと口をあけて目を丸くする。


「はぁ!? なにそれ? なんでそうなるわけ!?」


「知らないわよぉ!」


そんなの、私が聞きたいよ!!