いぢわる王子様

この人に傷つけられたのに、なんで甘えてるんだろう。


この人がいなければ傷つかなかったのに、なんで安心するんだろう。


「碧、今度は何があった?」


すぐるが、私の頭を優しくなでながら、ささやくように聞いてきた。


「……制服……」


たったそれだけ言うと、すぐるはすべてを理解したように、大きな息を吐き出した。


「ごめんな、碧」


「今までの子達も……?」


「……あぁ」


「なんっ……で!!」


「ごめん、碧。ごめん」


なんで?


なんで謝るばかりなの?


涙が止まらなくて、すごく近くにいるすぐるの顔さえも、ハッキリとは見えなくなる。


こんなに近いのに、わからない。


こんなに近いのに、私は何も知らない。


「碧、もう少し我慢できるか?」


え……?


「俺にあたってくれてもいい。だから、もう少し――」


「待って! 私、いやがらせの犯人わかったの」


すぐるの言葉をさえぎって言う。


けれど、すぐるはうつむき、左右に首をふった。


「すぐる……?」


「清子のこと、責めないでやってほしいんだ」


え……?


なに?


どういうこと?


すぐるは、最初からいやがらせの犯人を知ってたの?


知ってて、黙ってたの?


「すぐる、どういうこと? わかんないよ」


頭の中が、パニックを起こす。


わけがわからない。


「理由はちゃんと……話すから」


顔をゆがめ、何かに耐えるような表情で、すぐるはそう言い、私の体を引き離した――。