☆☆☆
「更衣室で見た男の人、1こ上の先輩だったね」
もうとっくの前にチャイムが鳴った後、トイレの個室で着替えながら、律が言った。
「そうなの?」
私は、鏡の前で少し赤くなった目を確認しながら、返事をする。
まだ、胸の奥がジンジンと痛むけど、ここで泣いたら本当に負けてしまう。
ライバルになるつもりなんてない。
だけど、負けるのだけは嫌だ。
「私見たことある人だった。たしか……誠って呼ばれてた」
「へぇ……」
私は、気のない返事をする。
「なかなかカッコイイ人だよねぇ」
「そうかな?」
というか、もう顔を忘れてしまった。
「そうだよ。背、高いし」
背の高い異性が好きな律は、そう言って楽しそうに笑った。
確かに、やさしそうな人ではあった。
ちょっと、弱そうだけど。
「それよりさ……」
気になることがあって、私は律に言った。
「何?」
「長浜弥生って、誰だろう……」
スカートに書かれていた、名前。
着れなくなってしまった制服は、体育館裏の焼却炉へ捨ててきた。
けど、その名前だけはシッカリと覚えている。
「さぁ、聞いたことないよね」
着替えを終えた律が、クシで髪をとかしながら出てきた。
これで、私一人が体操服姿だ。
その上遅れて教室へ入るなんて拷問のように恥ずかしいが、仕方がない。
「長浜弥生って人、何か関係があるのかな……」
☆☆☆
その日の放課後まで、当然私は体操服のままだった。
しかも、この格好のまま帰らなければならないから、一秒でも早く家に着きたかったのだ。
そんな私を引き止めたのは、更衣室で出会った、あの先輩だった。
「あれ? 君まだ体操服なんだ?」
学校を出てすぐのところでそう声をかけられて、足を止める。
「そうですけど……」
「これから、部活ってワケでもなさそうだね?」
「はぁ……」
曖昧な返事をした時、私の携帯電話が震えた。
すぐるからのメールだ。
《今日は、何もなかったか?》
まだ、制服のことを話せていなかった私は、どう返事をしようかと迷う。
「更衣室で見た男の人、1こ上の先輩だったね」
もうとっくの前にチャイムが鳴った後、トイレの個室で着替えながら、律が言った。
「そうなの?」
私は、鏡の前で少し赤くなった目を確認しながら、返事をする。
まだ、胸の奥がジンジンと痛むけど、ここで泣いたら本当に負けてしまう。
ライバルになるつもりなんてない。
だけど、負けるのだけは嫌だ。
「私見たことある人だった。たしか……誠って呼ばれてた」
「へぇ……」
私は、気のない返事をする。
「なかなかカッコイイ人だよねぇ」
「そうかな?」
というか、もう顔を忘れてしまった。
「そうだよ。背、高いし」
背の高い異性が好きな律は、そう言って楽しそうに笑った。
確かに、やさしそうな人ではあった。
ちょっと、弱そうだけど。
「それよりさ……」
気になることがあって、私は律に言った。
「何?」
「長浜弥生って、誰だろう……」
スカートに書かれていた、名前。
着れなくなってしまった制服は、体育館裏の焼却炉へ捨ててきた。
けど、その名前だけはシッカリと覚えている。
「さぁ、聞いたことないよね」
着替えを終えた律が、クシで髪をとかしながら出てきた。
これで、私一人が体操服姿だ。
その上遅れて教室へ入るなんて拷問のように恥ずかしいが、仕方がない。
「長浜弥生って人、何か関係があるのかな……」
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その日の放課後まで、当然私は体操服のままだった。
しかも、この格好のまま帰らなければならないから、一秒でも早く家に着きたかったのだ。
そんな私を引き止めたのは、更衣室で出会った、あの先輩だった。
「あれ? 君まだ体操服なんだ?」
学校を出てすぐのところでそう声をかけられて、足を止める。
「そうですけど……」
「これから、部活ってワケでもなさそうだね?」
「はぁ……」
曖昧な返事をした時、私の携帯電話が震えた。
すぐるからのメールだ。
《今日は、何もなかったか?》
まだ、制服のことを話せていなかった私は、どう返事をしようかと迷う。