思考が、どんどんマイナスへ落ち込んでいく。
そんな私の肩を、ポンッと誰かが叩いた。
律じゃない。
「誰?」
そう言って振り向くと……、私の様子を不思議そうに眺めている、見知らぬ男の顔があった。
180センチはありそうな身長なのに、全体的にすごく細い。
色は白くて、目はクリッと大きい。
「あの……」
私がキョトンとしていると、その人物はニコッと笑顔を見せた。
頬に、えくぼができる。
「大丈夫? 具合でも悪い?」
「あ、いえ」
どうやら、私がずっと座り込んで動かないものだから、勘違いされているらしい。
慌てて立ち上がると、律と笑みを作りあってみせた。
「そ? 俺、これから着替えるんだけど」
この更衣室は、男子と女子が兼用で使っている。
男子は外、女子は室内でというように別々の体育を受けるときだけ、使う。
「あ、すみません。すぐに出ます」
律がそう言い、着替えの荷物を両手に抱える。
「君たち、着替えは?」
「あ、いいんです」
というか、これじゃ着れないしね。
一つお辞儀をして、私たちはそそくさと更衣室を出たのだった……。