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私へのいやがらせがエスカレートするのに、時間はかからなかった。


一番最初の、ゴミ箱の事件があってから、ほんの3日後。


新しい事件が、起こった。


「うわ……」


ゴミ箱の中身を確認した時と同様に、言葉を失う律と私。


目の前には、切り刻まれた制服が入った、ロッカー。


言うまでもなく、私の制服だ。


体育の授業中にやられたらしい。


「長浜弥生」


律の呟きに、私は「へ?」と聞き返す。


「ほらここ」


律が指差した場所を見ると、確かに黒いマジックでそう書かれているのがわかった。


スカートに、大きくだ。


紺色なので気づきにくいが、確かに、ハッキリと書いてある。


「この前のゴミ箱にもこの名前書いてあったよ」


「え? うそ!?」


「本当。ゴミ箱の裏側にさ。碧気づかなかったの?」


その言葉に、私はうなづく。


長浜弥生……。


聞いたこともない名前に、眉をよせる。


「でもさ、これで犯人はわかったね」


「え? 長浜弥生?」


「犯人が自分の名前をそのまま残すわけないでしょ」


突っ込む律に、私は「そっか」と、頭をかく。


「犯人は、体育の授業中にここに忍び込んだのよ」


忍び込んだ……。


ということは、授業を抜け出したってことだ。


「あっ!!」


その瞬間、犯人が簡単にわかってしまった私は大声をあげそうになり、慌てて両手で口をふさいだ。


まさか……。


信じられず、律を見る。


律は、無言でうなづいた。


どう考えても、間違いない犯人……。


それは……。


その時、ガラッと音を立てて更衣室の扉が開いた。


驚いて振り向く私たちの視界に入ったのは――清子さんだった――。