すぐるに連れられて入ったのは、大きなフローリングの部屋だった。


その真ん中にはウォーターベッドがあり、天蓋が天井からぶら下がっている。


まるで、お姫様のベッドのようだ。


「すぐる、この部屋は?」


ベッドに下ろされた私は、部屋の中を見回して言った。


「一番上等な客間だよ」


客間……これが!?


まるでホテルの一室をそのままここに移動させてきたように豪華だ。

「碧、よく見せて」


私が部屋に感動していると、すぐるがそう言って、私をベッドの上に立たせた。


足元がフワフワとして、なんだか重力を失った気分。


「すごく、似合う」


真剣な表情でそういわれると、私はますます恥ずかしくて、すぐるから目をそらした。


すると、すぐるの手が私の足に触れた。


「すぐる……くすぐったい」


そう言い、思わず払いのける。


心臓が、バクバクと音を立てている。


「碧」


「……な……に?」


「嫌だったら言えよ」


へ?


その瞬間、私はすぐるに抱き寄せられ、そのままベッドへと押し倒されていた。


一瞬の、出来事。


気づけば、すぐるの唇が私の口をふさいでいた。


なっ……!!


すぐるっ!!


すぐるの舌が強引に割って入ってきて、涙が出る。


苦しいよ!!


思わず、すぐるの背中を叩く。


なのに、私の舌にからめられた舌は、なかなかのけてはくれない。


「ふっ……」


やっと解放されたときには、頬に涙の筋ができていた。


「碧?」


「私……」


「うん?」


「キス、初めてだったんだから……」


別に悲しいワケじゃないのに、次々と涙が浮かんでくる。


嬉し涙?


なんだろう、この気持ち。