いぢわる王子様

その時、ホームルームが終わるチャイムが鳴り響いた。


今から教室へ戻れば、授業には余裕で間に合う。


「律、教室戻ろ」


と、私は律の腕を引っ張る。


けれど、律はまるで大きな岩にでもなったかのように、ピクリとも動かない。


「碧!!」


突然、律に怒鳴られ、私はビクリとして手を離した。


「なに?」


律の目が、普通じゃない。


いつもの2倍くらいに見開かれた目には『パーティーに行きたい! 今すぐ!!』とハッキリと書かれていて、ギラギラと輝いている。


あぁ……。


嫌な予感がする……。


すぐるは困った表情の私に微笑みかけてきた。


王子様……。


本当に、そう思う。


綺麗で、カッコイイ笑顔。


けど、その王子様の口から出たのは、想像通り私を困らせる言葉だった。


「今から3人でパーティーに出よう」


やっぱり!!


そう言われるとわかっていたはずなのに、すぐるの言葉がズンッとのしかかる。

確かに、嫌なことがあって今はあんまり授業に出たい気分でもない。


けど、だからってサボることはないハズだ。


私が悩んでうつむいていると、律が背中を叩いてきた。


「いいじゃん、今日1日くらい。碧も嫌なことがあったんだからさ、パーティーに出てスッキリしようよ!!」


「碧の友達はいい事を言うな」


すぐるまでそんなことを言ってバンッと背中を叩くものだから、私は軽く咳き込んだ。


バカ力!!


「彼女に誕生日をド忘れされていた俺の気持ちがわからないのか?」


すぐるはそう言って、ズイッと顔を近づけてくる。


うっ……カッコイイ。


「ド忘れじゃなくて、知らなかったんだってば」


「頭に入ってないんだから同じことだ」


全然違う!!


眉を寄せて口をヘの字にしていると、すぐるが私のほっぺをグイッと押し上げた。


強引に、笑顔を作らされる格好になる。


「にゃに、しゅんにょよ!」


ジタバタと暴れる私に、すぐるが不意にキスをしてきた。


律が、「きゃぁ~!」と飛び上がって喜ぶ。


「ほら、行くぞ」


呆然と立ち尽くす私に、すぐるはそう言って歩き出した……。