私。


つい昨日の私。


窓際の席で、目を細めてまどろんでいる様子が、そのまま切り取られて、今手の中にある。


律が、他の紙も開いて確認を始めた。


嫌な予感が、胸を渦巻く。


友達が自分の陰口を言っている所を偶然聞いてしまったような、気持ち悪さ。


「これ、全部――」


「やめてっ!!」


律の言葉を、私は途中でさえぎった。


聞きたくない。

開いた写真たちが、律の手のひらからスルリと落ちた。


机にふせて眠っている私。


体育館でバレーボールをしている私。


帰り道、律と一緒にマクドナルドへ寄る私。


家の中へ入っていく私。


私。


私。


私。


私……私。


その中の一枚を、手に取った。


カタカタと、体が震える。


更衣室で、着替えをしている……下着姿の……私。

「碧……」


私は、その写真を思いっきり力を込めて破った。


細かく、細かく。


ビリビリと音を立てて小さくなる写真に、体の震えは更に強くなる。


どうして……?


なんで……?


「碧、落ち着いて」


律が、私の体を抱きしめてくれる。


「誰が……こんな……」


声も震えて、うまく言葉にならない。


どうすればいいか、わからない。


「ね、やっぱりS王子が関係してるって!」


呆然とする私に、律がそう言う。


けど、この声もどこか遠くで聞こえているようで、反応ができない。


どこをどう見ても、嫌がらせだ。


今までこんなこと、一度もなかった。


それなのに、すぐると付き合いはじめた次の日から、こんな――!