いぢわる王子様

「……私、すぐるのお父さんから連絡もらって来たのよ?」


「あぁ。協力してもらったんだ」


協力!?


すぐるの言葉に、私は言葉を失う。


自分の親に、自分が死んだと連絡をさせた。


そして、それを引き受けた親。


どうして?


ただの冗談ではないと感じた私は、知らず知らずのうちに生唾を何度も飲み込んだ。


喉が、口が、渇く。


妙な汗が、背中を流れる。


「碧は、捨てたんだな」


「……え?」


「写真」


すぐるは、ダンボールの中を見て、そう言った。


私は、ひとつ頷く。


それが、何?


わけがわからず、眉を寄せる。


「碧なら、捨てると思ってた」


「どういう意味?」


「写真の女たち全員に、今日と同じことをやってきた。けど、この写真を捨てたのは、碧が始めてだ」

そう言うすぐるは、どこか悲しそうな表情をしている。


「ごめん……つい」


「いや、いいんだ。それで、いいんだよ」


首を振り、今度は満足そうな笑顔を見せる。


コロコロと変わるすぐるの表情に、私は戸惑う。


一体、何が目的なのかわからない。


「碧、契約を追加する」


「え?」


すぐるは、また私を抱きしめた。


今度は、胸が苦しいくらいに、強く。


そして、耳元でささやく――。

「何があっても、俺だけを信じてろ。


そして……俺のいない時に何かが起きても、絶対に負けるな――」


あなたが、すごく辛い過去を一人で背負ってきたこと。


このときの私は、何も知らなかった。


ただ、なんて強引で、自分勝手な人なんだろうと、思ってた……。