なのに、なんで胸が痛いんだろう?


たった一日だよ?


たった、それだけの付き合いだよ?


「……ハハハッ……馬鹿は私か……」


たった一日。


その一日で、本当に好きになった。


森山すぐるに、恋をした。


そして失った。


あっという間に。


この、写真の中の花のように。


はかなく散っていった。


あ、違うか。


写真に入れれば永遠に花は散らない。


私には、写真さえ、ないんだ。


こぼれそうな涙をグッとこらえて、私は「よいしょ!」と、わざと声を出して漫画をダンボールへつめた。


写真も、一緒に。


そして、今度は机を見る。


今度はこっちを片付けなきゃ。


気合を入れなおすように、腕まくりをする。


今の時期だと、少し寒い。


けど、私にはちょうどよかった。


一番上の引き出しを開けてみると、教科書やノートが出てきた。


パラパラとめくってみると、ノートには一応ちゃんと授業内容が書かれていた。


字も、思ったより汚くない。


こういうのは、一応本人の思い出として取っておいた方がいいのかな……。


そう思い、ノートは引き出しの中へと戻す。


じゃぁ教科書は?


本屋にいけばいくらでも売ってるものだし……。


と、またペラペラとめくってみる。


そして、隅っこの走り書きに気づいた。


ん?


さっき本棚にも置いてあった、漫画のキャラクターが描かれている。


しかも、パラパラ漫画だ。


私は思わず、プッと笑った。


「案外可愛いんだ」


予想外のパラパラ漫画に、今度は胸のあたりがポッと暖かくなる。


そっか。


色んな顔があって当たり前だよね。


いきなりキスしてくるからって、そこまで嫌な奴ってワケじゃ、ないんだよね……。