手伝ってほしい事、とは、遺品整理のことだった。


普通、こういうのは身内がやるものだけど、どうしても、と頭を下げられたので私はすぐるの部屋へ足を踏み入れていた。


初めて入る、すぐるの部屋。


たった一日……。


ううん。


一日も一緒にいることのなかった、恋人の部屋。


部屋の中は案外綺麗に整えられていて、机、本棚、ベッド、テレビ、DVDデッキ、それ以外に大きな物は見当たらない。


私はまず最初に、本棚の本を手にとった。


パッと見るだけでも、少年漫画ばかり。


こういうのって、捨ててもいいのかな。


遺品整理なんて、生まれてこのかたやったことがない。


けれど、大切なものっていうのは写真とか、手紙とか。


そういうものだと思っていた。


私はマンガ本を何冊も両手に抱え、大きなダンボールへと入れていった。


これだけでも、なかなか大変だ。


「漫画ばっかり読んでるから馬鹿なんじゃない」


大量の漫画に苦戦しながら、私は愚痴る。


その時だった。


漫画の間から、何かがスルリと足元へ落ちた。



何?


それを手に取り、「あ……」と、呟く。


写真だ。


満面の笑みのすぐると……知らない、女の子のツーショット。


後ろはお花畑で、2人で手をつないでいる。


幸せそうな、笑顔……。


ズキン。


ズキン。


ズキン。


胸の痛みに、私はその写真を裏返して、漫画の隙間へ戻した。


『すぐるにとってあなたが特別なワケじゃないわ。勘違いしないであげてね?』


また、清子さんの言葉がよみがえる。


……っ!!


わかってるよ!!


それに……すぐるはもう……。