明らかに不機嫌そうな顔のその人物は、私の持っていたジュースを指さしてきた。


「え……?」


見ると、ぶつかった衝撃で相手の制服にジュースがかかっていたのだ。


ヤバイッ!


そう思うと同時に「ごめんなさいっ!」と、あわててポケットからハンカチを取り出す。


あぁもう、なんてドジなんだろう。


と、自分のマヌケさを恨む。


よりにもよって、こんな怖そうな人に……。


「こんな汚れたなハンカチ使えるかよ」


相手はそう言い、私のお気に入りのハンカチを汚いもののように親指と人差し指でつまみ、顔をしかめた。


なにおぅ!?


つぅか昨日洗ったばっかりだってば!!


心の中でそう言い返すが、怖くて言葉にはできない。


「保健室」


「……へ?」


「保健室連れてけよ」


保健室??


「ケガ、したんですか?」


「違げぇよ馬鹿。保健室の雑巾で拭いてもらう」


「はぁ……」

って、それって私のハンカチが保健室の雑巾よりも汚いってこと!?


さすがにそこは何かを言い返そうとしたが……律が横からそれを阻止した。


「やめな。なんかやばいって!」


「でも、こいつ一体何様なの!?」


「そりゃそうだけど、碧がぶつかったのは事実なんだから!」


ぶつかったから?


ぶつかったからってここまで言われなきゃなんないの!?