「すぐる、これって……」


「碧のために用意させた。大丈夫、刺は抜いてあるから」


そう言うすぐるにエスコートされて、おそるおそる部屋の中へ入っていく。


バラの柔らかな香りが、漂ってくる。


「す……ごい」


感激しすぎて、そんなありきたりな言葉しか出てこない。


いいたとえが、何一つ出てこない。


知らず知らずのうちに、嬉し涙がこぼれていた。


「碧?」


「だいじょう……ぶ」


すぐると付き合ってからほんの数ヶ月。


その間に、何度も何度も泣いてきた。


辛くて辛くて、泣いてきた。


でも、今は違う……。


私は、思わずすぐるに抱きついた。


幸せすぎて、嬉すぎて。


「ありがとう」


ありがとう、すぐる。


私のために、こんな素敵なものを用意してくれて。


「碧……」


すぐるがバラを一本取って、それを私の髪にカンザシのようにさしてくれた。。


そして、キスをした……。


やわらかくて、暖かくて、とても幸せな、キス――。


私はもうしばらくすぐるの胸に身を預けていたかったけど、すぐるが私の体を離した。


「これ以上くっついてたら、やべぇ」


「……え?」


「先にパーティーするぞ」


そう言うと、すぐるは音楽を流し始めた。


クリスマスソングだ。