「碧、早く決めろよ」


私が一人でニヤニヤとしていると、すぐるにせかされた。


目の前には、ガラスケースに入ったケーキ達。


どれもおいしそうで、上に乗っている砂糖菓子が可愛らしい。


けど、やっぱりケーキといえばこれだよね。


私は、一番シンプルなイチゴのショートケーキを選んだ。


特に飾りもないし、誰もが食べた事のある味。


「そんなのでいいのか?」


「いいの。これくらいが丁度なの」


私と、すぐる。


清子さんと、弥生さん。


なんの飾り気もなくて、よくあるものたち。


けど、それが一番食べられていて、色んなものに手を出してみても、結局はこの味へ戻ってくる。


そんな、関係。


「じゃぁ、これな」


すぐるがそう言い、イチゴのショートケーキをホールで買ってくれた。


☆☆☆

すぐるの家は、いつも通りの豪邸だった。


けれど今日は「靴脱いでいいぞ」と、玄関を入ってすぐ、すぐるに言われた。


「え?」


聞き返す私に、すぐるがスリッパに履き替えていく。


「日本なんだから土足ってのはねぇよな」


その言葉に、私はプッと噴出した。


すぐる自身も、この土足の習慣に疑問があったのだと思うと、なんとなくおかしかった。