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清子さんの話しで、私の疑問や謎が一気に解けた。


『私の大切な人っていうのはね……』


『弥生のことよ』


清子さんは、同性愛者――。


そして、すぐるのイイナズケに恋をしていた。


だから、私へのイヤガラセに、長浜弥生の名前を何度も何度も使ったのだ。


すぐると弥生さんは愛し合っていた。


すぐるが相手だから、清子さんは弥生さんをあきらめていた。


それなのに……。


14の頃。


弥生さんは死んでしまった。


それから清子さんは死んだ弥生さんに変わり、すぐるを他の女から守り続けてきたのだ。


すぐるが女の子を好きになり付き合っても、清子さんの嫌がらせが原因で、長く続くことはなかった。


すべては、清子さんの弥生さんへの深い思いから生まれた……間違った愛情。


「……っ」


私は、いままでのイヤガラセをすべて忘れたかのように、清子さんの事を考えて泣き出した。


一生報われることのない、弥生さんへの片思い。


「泣いてるの?」


清子さんが、驚いたようにそう聞いてくる。


「だって……っ」


片思いに、いつまでのも縛られている清子さん。


そこから、動き出せずにいる清子さん。


そんなの……悲しすぎる――!!


「弥生さんが亡くなって、まだ数年だから辛いのはわかるよ?」


「え?」


「大切な人がいなくなって、辛くない人間なんていない」


だけど……。


だけどね、清子さん。


「いくら他人を傷つけても、弥生さんは戻ってこないの!

いくらすぐるを他の女から守っても、弥生さんは戻ってこないの!

あなたが弥生さんのためにしていることで、今生きている人たちが泣いてるの!」


これからも続いていく『生』を、『死』が原因で苦しめちゃ、いけない……!


無理に、忘れなくていいんだよ。


ずっとずっと、心の中にいていいんだよ。


私は、清子さんを抱きしめた。


辛いなら、休んでいいんだよ。


歩き出す前に、歩ける状態であるか、ちゃんと自分が自分を見てあげなきゃ。


清子さんが、大声を上げて泣き出した。


ヒックヒックと小さく、何度もしゃくりあげながら。


無理に刺を抜くと、痛くて痛くて仕方がない。


その後も、血が出て痕が残る。


いつまでもいつまでも、消えない傷になってしまう。


だからね、ゆっくりゆっくり。


優しく待ってればいいんだよ。


誰も、あなたを攻めたりしないから――。