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『すぐるにとってあなたが特別なワケじゃないわ。勘違いしないであげてね?』


清子さんの言葉が、いまだに頭の中に残っている。


「わかってるっつぅの!」


思わずそう声に出して、ハンバーガーにかじりついた。


放課後のマクドナルドは、制服姿の若者たちが大半を占めていた。


「碧、あんた今日かなり変よ?」


そう言って笑いながら、律はポテトをハムスターのように口に含んだ。


「変? 私が? そんなワケないでしょ。変なのはあの森山すぐるっていう男と、何故だかいちいち私に釘を刺してきた清子さんよ!」


「あぁ~はいはい。ファーストキス奪われて頭の中がショートしちゃったのね」


ご愁傷様。


と、両手を合わせる律。


「律、私は正常よ!」


キッパリと言い切る私に、律はまた「はいはい」と適当な返事をした。

「じゃぁ聞くけど、碧」


「なによ?」


「あんた、S王子にキスされて、どうした?」


「どうしたって……」


私は、あの時のことを思い出す。


「突然のことで、どうにもできなかった」


壁に押さえつけられて、キスされて……。


それで、『俺の女な』なんて言われて、私は完全に頭の中の思考回路は停止していた。