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部活動に熱心な清子さんが、まだ学校に残っていることは最初からわかっていた。


私は、迷わず清子さんが所属している美術部へ向かった。


扉の前で立ち止まり、呼吸を整える。


部室の中からは時折楽しそうな笑い声が聞こえてきて、その中に清子さんの声も混じっていることがわかる。


行くよ!!


自分自身に気合を入れて、扉を開けた……。

私が扉を開けた瞬間、今まで騒いでいた生徒たちがスッと静かになった。


みんなの視線が、私に注がれている。


顧問の教師の姿がないことだけが、救いだった。



「失礼します」


少し大きな声でそう言い、足を踏み入れた。


『よそ者が来た』というあからさまな空気の変化に足が重くなるのを感じる。


「清子さん、ちょっといい?」


私が話しかけると、清子さんはキャンバスから目を離し、「なに?」と、顔を上げた。


「話しがあるの」


握り締めたこぶしに、汗がにじむ。


「いいわよ」


清子さんは一旦部員の面々の顔を見てから、そう頷いた。