「どうして?」
なのに、誠先輩はキョトンとした顔でそんなことを言った。
「だって……」
「最初、イヤガラセをやったのはお前かって、北河に直接聞いたのは碧ちゃんだろう?」
「そう……だけど……」
あのときは、聞けるようなスチュエーションだった。
でも、今は状況が違う。
私が俯いていると、誠先輩がポンッと軽く頭を叩いてきた。
「碧ちゃん、あいつの事でもちゃんと成長してると思うよ?」
「北河からのイヤガラセも、負けずに頑張ってる。
イイナズケの話しだって、聞いてるときは痛くて痛くて仕方がなかっただろう? それを乗り越えてきたんだから、自分に自信持たなきゃ」
誠先輩……。
優しい言葉に、泣きそうになる。
「……私、頑張ります」
清子さんに、ちゃんと聞かなきゃ。
そう思うと、私は勢いよく立ち上がった。
善は急げ。
それに、今すぐじゃないとまたウジウジしてしまいそうで嫌だった。
「行ってきます!」
私はそう言い、律と誠先輩に大きく手を振り、ファミリーレストランを出た……。