ファミリーレストランの中、チューッとストローでオレンジジュースを吸い上げる、誠先輩。


誠先輩の隣には、メロンクリームソーダを飲む、律。


そんな中、私はまたため息を吐き出した。


制服のポケットからあのスーパーボールを取り出して、蛍光灯の明かりに当ててみる。


クッキリと浮かび上がるハートのマーク。


すぐるのハートは、今ここにあるの?


本当に、私のところにあるの?


「そっか、イイナズケって弥生さんの事だったんだぁ」


「うん……」


昨日の出来事を、事細かに話し終えたところだった。


私は、写真の中の弥生さんを思い出す。


14歳の頃の写真、ということになると思うけど、とても小柄で可愛らしい人だった。


「そこまで聞いて、どうしたワケ?」


誠先輩が、聞いてくる。


「なんか、頭の中が真っ白になっちゃって……。すぐるが何か話してたような気がするんですけど、覚えてなくて」


シュンと落ち込む私。


もしかしたら、大切なことを話していたかもしれないのに。

「まぁ、それだけでも聞けたなら、よかったじゃん」


「そうかなぁ……」


でも、それじゃぁ清子さんからのイヤガラセの意味がまだわからない。


清子さんは、やっぱりすぐるの事が好きなのかな?


だから、イイナズケだった弥生さんの名前を使ったとか?


「う~ん……わかんないよ!」


いろんな仮説が浮かんでは消え、浮かんでは消え。


結局、答えはどこにもない。


そんな私を見て、誠先輩がストローから口を離した。