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「あ~あ、やっぱりだね」
その日の昼休み。
購買で焼きぞばパンをかって帰ってきたときのことだった。
私は、自分の机をにらみつける。
「どうして……」
「S王子との仲が復活したからでしょ」
律も、机の上を見ながら返事をした。
すぐるとの付き合いが再開したから?
だから、机をカッターナイフで削られたの?
「『ながはま、やよい』」
私は、削られた文字を指でなぞりながら呟いた。
「まぁたこの名前かぁ」
スカートに書かれていた名前を思い出す。
『長浜弥生』
「誰なんだろ……」
「北河さんに聞いてみるのが、一番早いんじゃない?」
そう言い、律はパンをかじった。
「そうだけど……」
清子さんとすぐるはイイナズケで間違いないと思っている。
じゃぁ、この『長浜弥生』って、一体誰なんだろう?
清子さんとすぐるに関係している誰か?
でも、なんで私へのイヤガラセにこの名前を出すのか、全くわからない。
「なんか、2時間ドラマみたいだね」
「え?」
「碧、眉間にシワよせてうなり声上げてるからさ、昔ながらの『なんとかミステリー』みたいなドラマ思い出した」
ミステリーか。
確かに、そんな感じかもしれない。
「この名前を追っていくと、また新たにS王子の過去が暴かれる!!ってね」
人事だと思い、そう言って笑い声を上げる律。
「もう」
私はムッとしながら焼きそばパンをかじり、すぐるの、あの不安に満ちた顔を思い出していた……。