☆☆☆

「あ~あ、やっぱりだね」


その日の昼休み。


購買で焼きぞばパンをかって帰ってきたときのことだった。


私は、自分の机をにらみつける。


「どうして……」


「S王子との仲が復活したからでしょ」


律も、机の上を見ながら返事をした。


すぐるとの付き合いが再開したから?


だから、机をカッターナイフで削られたの?


「『ながはま、やよい』」


私は、削られた文字を指でなぞりながら呟いた。


「まぁたこの名前かぁ」


スカートに書かれていた名前を思い出す。


『長浜弥生』


「誰なんだろ……」


「北河さんに聞いてみるのが、一番早いんじゃない?」


そう言い、律はパンをかじった。


「そうだけど……」


清子さんとすぐるはイイナズケで間違いないと思っている。


じゃぁ、この『長浜弥生』って、一体誰なんだろう?


清子さんとすぐるに関係している誰か?


でも、なんで私へのイヤガラセにこの名前を出すのか、全くわからない。


「なんか、2時間ドラマみたいだね」


「え?」


「碧、眉間にシワよせてうなり声上げてるからさ、昔ながらの『なんとかミステリー』みたいなドラマ思い出した」


ミステリーか。


確かに、そんな感じかもしれない。


「この名前を追っていくと、また新たにS王子の過去が暴かれる!!ってね」


人事だと思い、そう言って笑い声を上げる律。


「もう」


私はムッとしながら焼きそばパンをかじり、すぐるの、あの不安に満ちた顔を思い出していた……。