いぢわる王子様

「で、碧ちゃんの話題で意気投合して……」


「そのまま付き合うことになっちゃった!!」


テヘッと笑って見せる律に、私は唖然とする。


なに?


なんなのそのなれそめは!?


私が2人を傷つけたことで凹んでる間に、当人たちは幸せいっぱいだったワケだ。


しかも、私の話題で意気投合だって!!


「じゃぁ私は……」


「うん、私たちの恋のキューピッドね」


そう言い、ウインクしてみせる律。


キューピッド……。


その瞬間、体中の力が抜ける。

「だからさ、土下座とかやめてよね」


「あ……」


そうだよね。


結果的に私がやったことは、2人にとってはプラスだったのだ。


謝ってもらう必要なんか、どこにもない。


「でもさ、碧がそうやってちゃんと謝ってくれたのは、うれしかったよ」


「律……」


「やっぱり、私たち親友だもんね!」


律……。


律、ありがとう!

私まで嬉しくなって、律に抱きつく。


これで、なにもかもうまくいく。


全部、問題は片付いた。


律の事も、誠先輩の事も、すぐるの事も。


「全部……ん?」


心の中に、引っかかる。


全部じゃない……、なにか忘れてない?


なにか、ものすごく重大なこと……。


「でもさ、碧ちゃんこれから大変だね」


誠先輩が、哀れむように言う。


「へ?」


キョトンとして聞き変えす私。

「あの男を選らんだんだろ? また北河になにかされるかもしれないぞ?」


「そうそう。それにほら、イイナズケのこととか」


あぁ!!


そうじゃん!


私にとって重大なこと!!


いやがらせに、イイナズケ!!


「律~っ! どうしよう、私……」


すっかり忘れてたよぉぉぉ!!