同窓会から数日後のことだった。仕事を終えて帰宅した私は、自宅マンションの入り口で偶然にも翔と出会った。
「もしかして絵理って、此処に住んでるのか?」
「そうだよ。えっ!翔も?」
「あぁ、絵里は何階?」
「五階だけど……」
「マジで!? 俺もなんだけど……」
「翔はいつから、此処に住んでるの?私は二年前からだけど」
「俺は今日から」
「そうなの?イタリアから帰国してから今まではどうしてたの?ホテル暮らしとか」
「いや……気に入った部屋が見つかるまでって約束で、チームメイトの部屋に居候してた。まさか絵里と同じマンションとはな」
「ほんと私達って、腐れ縁だね」
「あぁ、そうだな」
私達は一エントランスに入りエレベーターが五階に到着すると一緒に降りた。そして鍵を取り出す為、部屋の前で立ち止まると、なんと……翔の部屋は私の隣だった。
一人暮らしをして、また翔とお隣さんになるなんて……こんな偶然ってあるんだと思った。
何だか嬉しいような、気が重いような……複雑な感情が私の心の中を駆け巡る。春香にこのことを話そうと電話を掛けた。
胸の内を相談すると、春香が予想外のことを言い出すので驚いた。
『それって、偶然っていうより運命なんじゃない』
「えっ、運命?何で?」
『だから、きっと二人は運命の赤い糸で結ばれているんだよ』
「ちょっと春香、からかわないでよ」
『別にからかってないよ。今は分からなくても……そのうち気付くから』
「春香の言ったこと、とりあえず覚えておくよ」
『ちょっと、そんな軽く流さないでよ。私は本当に2人は運命の赤い糸で繋がってるって思うんだから』
「はいはい。分かったから」
私は力説する春香の話を、軽く聞き流して電話を切った。