渉に別れを告げられてからの、私は仕事に没頭することで、彼のことを忘れようとしていた。だけど簡単に忘れることなんて出来なかったので、暫くの間は仕事一筋に生きる決意をした。
そんな時私はプロのサッカーチームの取材をすることになった。今までは新聞よりも雑誌の企画で学生の取材が主だった。
先輩記者の付き添いではあるもの、色々学ばなければならない。私は彩夏先輩の指示に従ってメモを取る日々。
彩夏先輩は私の憧れの存在なので自分も彩夏先輩のようになりたいって思っている。
プロの取材は初めてで……仕事とはいえ生で試合を見れる事に心の中でかなり興奮していた。
その一方で私は中学の頃にサッカー部の練習を毎日見ていたことを思い出した。
好きな先輩を見つめるのが楽しかった。だけど……その先輩に彼女がいると知った時、私が受けたショックは、かなり大きかった。今となっては、楽しい思い出のひとつになっている。
私達が取材していた試合は、鹿島アンテーレーズvs横浜マリオン。試合結果は、2―0で横浜マリオンの勝利となった。
FWの高木 翔の2ゴールで試合は決定的になった。
高木 翔って……まさか……あいつ?いつ、日本に戻ってきたんだろう。翔は中学までは隣の家に住んでいた幼馴染みだった。私はいつも翔にイジメられていたから、私は翔のことが大嫌いだった。
翔はサッカーが上手かったので……サッカーの強豪校へ進むため県外の高校へ進学した。
だから……それ以来会うことはなかったけどメールや電話で、たまに連絡を取ることはあった。
だけど翔は大学を卒業後、イタリアのクラブチームに入団したので、翔と連絡を取ることはなくなった。