「双木、大丈夫か?その……いろいろあってつらい時期なのもわかるが、お前自身も大事な時期だからな」
「……はい」
「まぁ、それでも上位には入れてるしな、志望校のランク少し落とすのもありだとは思うから。視野広く考えてみような」
僕と依の関係を知る担任は、気遣うように言いながら肩をポンと叩く。
それに対しても僕は、笑顔や落胆も見せることなく小さくお辞儀をして職員室を出た。
志望校のランクを落とす、か。
それもありかもな。
もともと僕自身は医師になりたいという願望はなく、言われるがままやってきただけだ。
好きなことを失い、好きな人を亡くし、希望と呼べることがひとつもない。
なんのために頑張ればいいか、どう頑張ってきたかもわからなくなってしまった。
今の自分にできることを昨日は少し見つけられたけど、それも依がいたから見つけられたこと。
……依が思い残しを全て叶えて成仏したら、僕はどうなるんだろう。
ふたたびなにもない自分になったとき、僕はまた歩けるのだろうか。