「……なんで人は、失くさないと気づけないんだろ」
依がぼそ、と呟く。
めずらしく小さな声が、胸に鉛のように沈んだ。
その感覚が表情に現れていたのだろうか、依は僕を見ると気を取り直して小さく笑う。
「洸太は、私が死んじゃってから後悔したことある?」
依が亡くなってから、感じた後悔。
なんて、そんなのあるに決まってる。
「……あるよ」
どんどん、どんどんと、いくらでも後悔は溢れてくる。
もっと、優しくしたかった。
もっとふたりでいろんなところに行って、もっと話して互いを知りたかった。
もっと、笑顔が見たかった。
八つ当たりしてごめんって言いたかった。
なのに、再会してもまだ言えない。
言葉がうまく出てこない。
これがまた後悔につながってしまうかもしれないのに。自分の不器用さが嫌になる。
それ以上の言葉が言えなくなってしまった僕に、それに気づかないように依はいつも通り笑った。
「あ、もっとかわいいって言えばよかったとか?」
「……はいはい」
「あー!流した!」
わざとおどけてみせる依に、僕もそれ以上その話題に触れることはしないまま、自宅の前で足を止めた。
きみが死んで46日。
残された思い残しはあと3つ。
これ以上、悔やまぬように生きていたいと思うのに。
今もまだ、言えない気持ちが降り積もっていく。