初めて近くで見た彼女は、とても色白で小さくかわいらしい。

ついまじまじと見てしまった僕の視線に気づくことなく、彼女は手をそっととり立ち上がった。

この手を握る折れてしまいそうな細い指に、思わずドキリとしてしまう。



『あれ、なにこれ?』



ところが彼女のその声に、ふと我に返る。

見ると僕の鞄の中身が散らばる中、最悪なことに、小説を書いたノートが広がった状態で依の目の前に落ちていた。

彼女はそれを見つけると手に取り目を通す。



『あ!それはっ……』

『小説?しかも手書き……ってことは、双木くんが書いたの?』



不意打ちで名前を呼ばれて、彼女が僕の名前を知っていることに驚いた。

けれどそれ以上に、まずいものを見られてしまったことに全身の血の気が引いた。



まずい。

コソコソと小説を書いているなんて、こんなカースト上位の女子に知られるなんて最悪だ。絶対バカにされる。



明日から僕は、同級生たちの間でノートを回し読みされて笑われて、からかいの的にされるかもしれない。

クラスメイトたちから、いや学校中の人から笑われる。そんな嫌な想像を一瞬でめぐらせた。