「“晴天(せいてん)”のCDを買ってほしいの」

「は?」



晴天って……誰もが知る大人気の国民的男性アイドルグループだ。

それのCDを、って……。



「依、CD買い損ねたくらいで成仏渋ってるのか……」

「って違うー!思い残しを叶えるために、CDが必要なの!」



依は『失礼な』と言いたげに頬を膨らませる。

叶えるためにCDを、って。余計意味がわからない。

けれど依がそう言うのなら仕方ない、と僕は晴天のCDが並ぶコーナーを探す。



ひと言に晴天のCDといっても、デビューしてから10年は経つアイドルだ。アルバムだけでも何枚もある。



「で?どのCDだ?言っておくけど、『あの曲が入ってるCD』とか言われても僕にはわからないぞ」

「わかってるよー、洸太流行りの曲ですら疎いもんね」



余計なお世話だ。確かに普段からテレビもあまり見ないし、そういった話題もあまり興味がないから、今流行ってる曲やアーティストを聞かれてもほとんどわからないけれど。

笑いながら依は売り場を見て、一枚のCDを指差した。



「これ!このアルバム」



それは緑色の背景にアイドルたちが写ったジャケットで、帯には【7thアルバム】と書かれていた。

横に並ぶ先日出たらしい最新アルバムに【記念すべき10枚目】と書かれていることから、今から2〜3年は前のものだろうかと察した。

なぜ最新ではなく敢えて前の……?ますます意味がわからない。



不思議に思いながらもそれを手にとり、レジへ持っていく。