僕に、依の代わりができるとは思わない。

だけどこの時間が、神様が僕と依にくれた最後の時間なのだと思ったら、逃す手はない。



「本当に簡単なんだろうな」

「うんっ」



即答して頷くところが逆にちょっと怪しい。けれど僕は渋々納得するように小さく頷いた。



「……わかった」

「やったぁー!洸太大好き!」



依は喜んで僕に抱きつこうとした、けれどその腕は僕の体をスカッと通り抜ける。

一切感じることのない感触に、その透けた見た目通り依は本当に幽霊だったのだと実感した。



「あははっ、やっぱり幽霊だから人や物は触れないみたい」



僕が思ったことと同じことを言いながら、依は僕の体に触れようとしながらも貫通するのを見てけらけらと笑う。



「やめろ。不快だ」

「見て見て、洸太の口から手が生えてるー」



僕の背後にふわりと回り、後ろから手を貫通させ、僕の口から手が生えてるように見せる。

ますます不快だ……塩撒いてやろうか。



そう思う反面、彼女の表情を見てようやく状況に心が追いついてきた。