ふたつ隣の教室、窓際一番後ろの席には花瓶に活けた花が飾られている。
彼女のイメージによく合った、黄色やピンクの明るい色の花々。
誰が持ってきて飾っているかもわからないその花を横目に、重い足を引きずって学校を後にした。
依が、亡くなった。
それは今から約一ヶ月半前。正しくは44日前。
僕がそれを知ったのは、彼女が亡くなったという日の翌朝のホームルームの時。
クラスメイトたちと同じタイミングだった。
お互いの家に行ったこともなければ、家族に会ったこともなかったし、クラスメイトと同じ扱いだったのは当然かもしれない。
死因は、急性心不全。
近年若い人の死因としても少なくはない症状で、直接的な要因はわからないことも多いのだそう。
依に関しては実は生まれつき心臓が弱く、幼い頃心臓の手術を受けており、普段も薬を飲みながら通院も続けていたらしい。
そんなそぶりひとつも見せなかったから、依と仲のよかった友達も、誰も知らなかった。
それは僕も同じで、涙をこぼす担任の話から初めて知ったのだった。
『そんなまさか』、『信じられない』、ざわつき泣き出す人もいる中、僕は話の一部始終をまるで他人事のように聞いていた。