あたたかさや美味しさを感じられぬ食事は味気なく、手短に胃に流し込むと食事を終えて席を立った。



「洸太さん、ごはんもういいんですか?」

「……うん、ごちそうさま。もう少し勉強するから」

「無理のないようにしてくださいね」



穏やかに声をかける嶺さんにもそっけなく答えると、僕は二階の自室へ戻る。



……けど、依には悪かったな。



『人の言葉でやめちゃうなんてもったいないよ』



唯一夢を話せた人、そして唯一僕の夢を認めてくれた人なのに。

だからこそ、今もまだこの背中を押してくれようとしてくれていることもわかっている。

それなのに僕は八つ当たりして、依は悪くないのに謝らせてしまった。



「……最低だろ、自分」



ひとりきりの自室に、ぽつりの自分の声が響く。



なんでもっと冷静になれないんだろう。なんでもっと、優しくできないんだろう。

時々思うんだ。どうして依みたいな人が、僕と付き合っているんだろうって。



特別見た目がいいわけでもない、話が上手いわけでもない。

勉強が取り柄なだけの、夢を諦めた僕と。

聞いたところで依は、おかしそうに笑うんだろうけど。



椅子に座り学習机に向かいながら、今この瞬間も依の笑顔は簡単に思い出せる。