翌日、土曜日の朝。
今日は学校も塾もないというのに、アラームがなくてもいつも通りの時間に目が覚めた。
眼鏡をかけて、寝癖で跳ねた髪をかきながら机の上の卓上カレンダーを見る。
今日は6月6日……依が亡くなって48日目だ。
明日が49日で、最後の日。
依は成仏するために思い残しを叶えたいって言ってた。
つまり願いを叶えて49日を迎えたら……依はまた消えてしまうのだろうか。
依のことだから、しれっと残っていそうな気もするけれど。
でももしも、今度こそ永遠の別れがくるとしたら。
……叶えたく、ないな。
思い残しへの未練で、このままこの世界にいてくれたらいいのに。
触れられなくても、幽霊のままでもいい。そばで笑っていてほしい。
……なんて、自分勝手すぎて呆れる。
そう思っても結局は、依のためなら叶えてあげたいという気持ちが勝ってしまうのだけど。
心の中で依の願いと自分の願いを天秤にかけると、簡単に依に傾いた。
それを感じながら、制服の胸ポケットにいれたままだった赤い巾着を取り出す。
中身を手のひらに出すと、白いかけらが眩しい太陽の光に包まれた。
「……依」
小さく名前を呼ぶと、僕はそのかけらを両手でぎゅっと握りしめた。
まるで、彼女に触れられない代わりにするかのように。ぎゅっと、感触を確かめながら。