スコープを覗き込むと、仲良く腕を組んでイチャつくカップルが歩いていた。
どちらもいかにも頭の悪そうな、明るく染めた髪にジャラジャラのピアスという風貌。
周囲の冷えた視線も気にせず、下品に大声で喋ってるところを見ると、それなりに恨みを買ってるのも納得出来る。
風向きのせいもあるのかもしれないけど、広い道路を挟んだ向かいのビルの屋上からでもその声はよく聞こえた。
声は大きいが滑舌が悪くて何を言ってるのかは分からない。
まぁいいや。すぐに聞こえなくなるんだし。
私はカップルの女の方に銃口を向けた。
ギラギラと揺れるピアスを的変わりに、一発。
パァン!
周囲が銃撃に気がつく前に心臓、それからアキレス腱にもう一発ずつ。
パァン!パァン!
この間、約三秒。
ふむ、我ながらなかなかの腕だ。
銃を引っ込めて、ちょろっと目だけで下を見ると、案の定人だかりができていた。
紅く散った血飛沫が花火みたい。季節外れの花火大会を思い出すな〜……と、呑気に考えてしまう。
さて、さっさと降りて人だかりに紛れて、素知らぬ顔をしてなくちゃ。
私は『立ち入り禁止』の札を飛び越えて、来た道を辿るように降りていった。