少し順番を待ち、助手の若い女の子に呼ばれて診察台に腰掛ける。パーティションで仕切られ、隣同士は遮られているけれど様子は筒抜けだった。

患者さんに話しかける医師の知らない声、ナオさんより少しトーンが低めの。ああ。絶望的な確信。・・・・・・アナタハ、イナイ、ドコニモ。

覚悟してきたつもりだったのに。全然ダメだった。自分が砂になっていく、どんどん。砂になって落ちていく。

「新宮さん、お待たせしました」

落ち着いた話し方。顔を横に振り向けると、ナオさんより少し小柄な印象の、マスクに隠れていない丸い目がこっちを見ていた。

「井上といいます。今日は私が担当させてもらいますので、宜しくお願いします」

今日は? ・・・じゃあ次は?!

「次回は吉見先生なんですね?」

咄嗟に口から飛び出していた。念押しするような言い方だったかもしれない。
井上医師は事務的な、でも冷たくはない口調で答えた。

「その辺りのことは、私ではちょっと分からないんですけどね。新宮さんのケアは責任を持って引き継ぎしてますから、安心してください」