次の日。クリニックに電話で定期検診の予約日の変更をお願いした。本当はまだ一週間ほど先だった。

『少し歯茎が腫れてる感じがするんです』

嘘を吐いてでも確かめたかった。





街はクリスマスとお正月が混ざった色と空気に彩られていた。
わたしには。なんの匂いも手触りも感じなかった。

コートを羽織ってるのに温かみを感じなかった。社長に断ってクリニックに向かう足は、膝から下が今にも崩れ落ちそうに。

心臓だけじゃない、内臓がぜんぶ引き攣れる。建物に近付いていくごと。

黒いドアハンドルに手をかけゆっくり手前に引くと、開閉を報せるチャイムが軽やかに響いた。